はじめに
京都市美術館で毎年開催している「LINK展」は2015年9月で13回展を迎えます。
これまでのLINK展をふりかえりつつ、さらなる躍進を皆様にリアルタイムに感じていただきたいと考え、ブログで出展者へのインタビュー企画をはじめます。
インタビューのはじまりとして、LINK展と深い関わりのあるお二人にこれまでのLINK展、これからのLINK展について語り合っていただきました。
写真右 / 宮田 恭伸
スコップ美術表現研究舎代表
写真左 / ヤマゲンイワオ
京都リンクプロジェクト代表
スコップ美術表現研究舎からLINK展へ
池田 今回お二人に来ていただいているのはLINK展の12回の歴史の中で特に重要なお二人だと考えたからなんです。宮田さんとヤマゲンさんの目を通して、LINK展はどういった場所なのかブログを読まれた方に知っていただけたらと思っています。まずLINK展の話をする前に、LINK展の母体となったスコップ美術表現研究舎の話から始めていただけますか。
宮田 LINK展の第一回展を主催したスコップ美術表現研究舎は1995年に設立されました。ワークショップ主体の、ある種の学校のような美術研究所です。
現代美術は一見自由な表現が可能なように見えているけれど、経済的な理由や政治的な理由、あるいは社会状況の全般的な変化によって本当に自由な表現が出来ているんだろうかということを研究しながら実践を目的に活動してきました。
そしてスコップでは「写真」「版画」「ドローイング」などのワークショップを開催し、制作と研究を繰り返しました。そのうちに数年が経ち、その次の段階として今度はもう少し活動を外の世界へ広げようかなと思う時期がきました。
LINK展のはじまり
宮田 2001年頃に同時代ギャラリーにてスコップ展「私へのまなざし」を開催しました。いざやってみると面白い展覧会となり、一回で終わってしまうのは惜しいと感じました。そこで、2003年に京都市美術館の大陳列室を使い、21名の作家で名前も新たに「LINK展」が始まりました。
ヤマゲン スコップでやってきたワークショップというのはいろんな作家さんが講師を務めていて、スコップに行けば自分の興味ある分野だけではなくて、いろんな美術を知り、実践できる場所やったと思うんです。そのうちメンバーも講師も親しくなって、一種の美術サロンのようなそんな場でもあったと思います。そういう交流があってメンバーが増えてきた中で、じゃあみんな作品を作ってるんやからどこかで発表しようかという感じやったと思うんですよね。
宮田 そこからLINK展が始まった感じですね。たまには外へ発表して、より多くの人たちに見てもらおうじゃないかということが目的だったんです。
スコップ主催のLINK展から、
京都リンクプロジェクト主催のLINK展へ
ヤマゲン 僕はもともとはスコップに銅版画の講師として関わったのが最初です。その後、実行委員長としてLINK展にかかわるのですが、初めのうちはまさか自分がそういった立場になるとは思っていなかったから、その分はいい作品を作って参加することが自分の仕事だとそう思ってましたね。
池田 スコップ美術表現研究舎と、その延長線上のLINK展は宮田さんを中心に始まった。そしてヤマゲンさんが実行委員長をされた頃から、次のページのLINK展が始まったんじゃないかなと思うのですがいかがでしょうか。
ヤマゲン 宮田さんがLINK展の実行委員長をされて以降、数名の方が実行委員長を務めてくださいましたが、ある時、僕に頼めないかという話がきて。
宮田 その頃僕の体調が良くなかった頃で、LINK展の実行委員長として責任が持てない状態になっていました。なのでヤマゲンさんに助けてもらいたいとお願いしたわけです。
ヤマゲン 宮田さんがいろいろな美術運動や活動の場を作ったりしてるのを関わりながら見てたから、それを失くしてしまうのは惜しいというのと、何かの形で残したいというのはありましたね。それで引き受けることにしたんです。
宮田 ありがたかったですよ。
ヤマゲン いえいえ僕もいい勉強になって。そういう代表者になって何かをするというのは初めてやったし。
ただ最初は今までの流れがあるからそれを引き継いでくれたらいいという話やったんやけど、やるんやったら何か自分の形でしたい、関わった意味を持ちたいと思うとこもあって、自分のアイデアも出しつつLINK展に関わりました。この頃、主催団体もスコップから京都リンクプロジェクトという団体に移行し今に続くわけです。
若手が育つ場
ヤマゲン LINK展の実行委員長を1回2回と務めるうちに、見えてきたことがあって、これは美術の団体に限ったことではないのだけども、上に立つ者がずっと同じでは 周りが変わっていくのに変化に対応出来ひんという風に思うようになって、どんどん若い作家たちにも運営に関わってもらった方がいいんじゃないかと。
池田 若い子の力を信じて、彼らが活躍できる場所にしようということですよね。
ヤマゲン うん。でもそれは宮田さんもずっと取り組んでいること。でも今まで言葉としてLINK展の中で出てきてなかったところでもあって。同じ立場で若い子たちにも役を与えてみるとかそういうことなんかなと思います。それはもしかするとスコップでの宮田さんと僕との関係がそうだったのかな。当時スコップの講師の中ではちょっと僕だけ若手で、任される中で成長できた部分があるなと思う。ちょっと無理かなと思っても、やってみるやらしてみることはいいことかなと思ってるね。
宮田 若い作家が社会に出て美術を発表していく機会を作っていくという気持ちは確かにあったね。
池田 LINK展のいいところの一つに、実績のある作家と、若い駆け出しの作家が同じ土俵の上で戦える環境というのがあると思います。
宮田 逆に日頃は先生と呼ばれているような作家の方たちも、もの凄い緊張感がある(笑。
ある種の現場性というか、作る人はどういった立ち位置で作品を作るのかということを現代の美術をやる人は僕は持ってないといけないと思うんですよね。
誤った意味での芸術至上主義ではない展覧会、言い換えると自分の好きなことをやってりゃいいんだといことではもうやれない時代に入ってきているという、そういうことを非常に強く意識した展覧会にLINK展は今なってきていますね。
そういう意味で言うと、日本国内でもなかなか稀有な展覧会だと思います。さっき言ったある程度経験を積んだ作家と若手が同じ土俵で同じ条件で戦えるという環境も、実はありそうでなかなかない。
池田 それは若い側としては面白いことなのですが、挑戦される側としたらどうなんですか。
ヤマゲン 僕はずっとチャレンジャーだとは思ってるよ。だからみんなライバルだと思ってるもん。それにそれぞれ持ってるもんは違うから、ないもんを補いたいと思うし、ベテランも何か自分にとって得るもんがないと出品しないと思う。
宮田 僕らにとってもLINK展に出すことで意外性があったり、刺激があったりするしね。
「人と人とのはざま」
ヤマゲン LINK展のタイトルに「人と人とのはざま」というのがあって、LINK展はただ作品を作って出す展覧会じゃなくて、見る側ともつながることを望んでいるのが一貫してるところやね。
池田 そうですね。例えば実行委員になって驚くことなんですが、毎回のテーマを決めるのにこんなにエネルギー使うんだと。
ヤマゲン LINK展て作風も美術の捉え方もバラバラやけど、テーマがあることで一つになってると思うんよ。テーマの捉え方や作品への表し方もまた作家それぞれ違うんやけど、テーマを真剣に考えて作ることでLINK展は一つの展覧会になれると思う。それはLINK展にとって凄く大事なことやと思うねん。
「次の何か」がうまれる場所
宮田 LINK展は日本の戦後美術の大きな流れとは少し違う位置から生まれたと思うんですよ。そこに意外性や面白さが生まれる可能性はあると、しかし、まだLINK展が何者なのかということは実験を続けていかないとわからないと思う。で、その実験を続けて行くためにはいくつかの打たんならん手があるように思うわけ。スコップでやったような実験的なワークショップを続けることなんかもしれないし、なにか新たな手があるのかもしれない。でないと小さくまとまって、小さく平均化されて、小さく収束していくような気がするんよね。なのでこの実験がまだまだ続けられるように、作家の制作面からバックアップも続けられるような そんな会になっていけばいいなと思いますね。
あともう一つは、LINK展の出品者からもっと突出したものが出て来ないかなと思いますね。それには矛盾するようやけど具体的な夢のようなものが必要なのかなと思いますね。
ヤマゲン LINK展の未来にはすごく期待をしてる。でもそれはこうなって欲しいとかいうことではなくて、戦後の美術が、大きな流れの中で一つの動きを持っていた時代から、僕らはそれが過ぎて混沌とした時代に多感な時期を過ごして、ずっとモヤモヤしている中で、そろそろ「次の何か」が生まれてくる気がして。
それはLINK展だけじゃなくて美術界全般を含めての話だけれど。そのきっかけにLINK展が関わっていけるようにならないかなと凄い期待感があります。見てみたい。次の何かが出てくる状態というのに出会いたくて、期待を込めてやっていきたいと思っています。
LINK展からうまれた「次の何か」が広がっていったりとか、そんなことになったら面白いよね。
Place : Osteria roi
Interviewer : 池田宏介
Writer : 池田宏介 / 辻友香(ニャン)
photography : 辻友香(ニャン)
Producer : LINK展実行委員会
Adviser : 京都リンクプロジェクト